• 2 / 3 ページ


 
 
それから数年後。

しばらく前から体のあちこちを病魔に侵され始めたのが
誰よりも活発だった あの二番目の姉だった。


最後には肝臓を患っていて
あまり思わしくない病状が続いている。

しばらく経ったある日 突然連絡がきた。


姉の旦那さん…… 義兄からだった。

容態が急変して 危ないかもしれないと言う。


急いで入院先の病院へ向かう。


姉の魅力でもあったチャキチャキさが全くなくなり
華やかだった顔立ちが 生気を失いかけていた。


虚ろな目で私に気づいた姉が 何かを言いかけた。


「夢を見てね……」

一番大きな声だった人が こんなに小さな声しか出せなくなっていることに
私は驚きながら返事をする。


「うん。どんな?」

「あんたの…… 結婚式の前の日……の夜」

「うんうん……」


そう返事をするものの 私は何のことを言っているか思い出すこともできない。

喋らなくていいから…… そう叫びたい気持ちでいっぱいだった。



「みんなで屋台のラーメン…… 食べたよね……」


―― その言葉で あの夜のことを思い出した。


「あのときのことを夢で見て…… 美味しかったね……ラーメン」


「あのとき…… お姉ちゃん お風呂場のブーツ履いて出てきてね」


私は必死に笑ってるふりをして 姉に言い返す。



「みんなで…… 食べたよ……ね」


その言葉の後 姉は昏睡状態に陥った。



そうだった……

結局 家族みんなが一同に揃ったのは 
あのときが最後になってたんだ。


私は病室を出て 冷たい廊下の壁に寄りかかりながら思い出した。


気分の重さが 壁にもたれた体に移っていて
力を抜くとそのままズルズルと床に崩れそうだった。


あの夜のことを 夢にまで見て思い出していたんだ……


今そんなことを思い出しても お風呂場のブーツで笑えないよ……


 

更新日:2009-04-02 19:08:36

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook