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小説

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ゼンの記録

穏やかな朝を迎え、早起きした双葉は出かける準備を始める。
ショルダーバッグを肩にかけ、静かに玄関に向かうのだった。
スニーカーを履き始めた時、背後から人影が。

『出張か? そなたにしては早起きじゃの』

女性の形をしたコンちゃんが言った。
対する双葉は振り向いたものの、はだけた胸元とエプロン姿を目にして向き直る。

「最近、その形でいますよね。
 つか、なんです? その格好」

『双枝とお揃いにしたのじゃ。
 なかなか様になっておろう?』

「家事能力を上げていただければ、今より様になりますよ。
 向上させる気がおありなら、葛の葉さんの指示に従ってください」

『双葉よ、少しはわらわを信頼せぬか。
 子育てならばとうの昔に経験しておるわ』

「それって獣時代の話でしょう?
 いつまでも通用するとは限りませんよ」

双葉は靴ひもを結び直してすっくと立ち上がる。

「こちらはコンちゃんにお任せします。何かあれば連絡を」

そう言い添えて家を出た。
晴れ渡る空の下、黒いジャケットを着て歩く。
上空にできた空間の裂け目から見下ろされていることに気づかずに。
ふと空を見上げたものの、すでに裂け目は閉じていた。

更新日:2017-04-22 11:56:37