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小説

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リンの記録

視界は黒く染まっていた。
払い除けるようにして黒を吹き飛ばす。
横たわる人々の姿が目に入るも、無視して歩いていった。

道端に倒れている巫女を見つけるや、駆け寄って抱き起こす。
目にしたのは疲れきった幼い横顔であり、抱き寄せても瞼を開けることはなかった。

「こうなる前に、連れ出せばよかったんだ」

幼い横顔を見つめつつ、悲痛な声でぽつりとこぼす。
呼び声を聞いて緩慢な動作で天を仰げば、目を刺すような光を浴びるのだった。
反射的に目をすがめたものの、覗き込んだ影に光を遮られて再び見る。

「おはよう、双葉。ようやく目が覚めた?」

視点が定まれば眼前ににこやかな顔があった。
一目で双子とわかるよく似た顔である。
にこやかな顔から不機嫌さを感じたものの、双葉は気だるげに口を開いた。

「おはよう、双枝。ようやく目が覚めた。つーか、あちー」

「それはわたしも一緒。とりあえずパジャマ脱いで」

呆れ気味に催促されて渋々起き上がり、あくびをしながら立ち上がる。
上着のボタンを外しつつ箪笥に歩み寄った。
引き出しを開けて手前の着替えを引っ張り出す。
パジャマを脱ぎ始めれば、背後から剥ぎ取られることに。

「予定がないからって初日からだらけ過ぎ。
 せめてそれらを片づけといてよね?」

小言を言われて「んー」と生返事を返す。

振り返った時には姿はなく、微笑しながら膝をつく。
畳の上に紙切れが散乱しており、一枚だけそっと拾い上げた。
口元に寄せてにやりと笑う。

「予定ならあるさ。夏らしいイベントがね」

玄関チャイムが鳴り響く。
しかし双葉は動かず、目張りした暗く狭い自室に佇んだ。

双枝が駆け出し、板張りの廊下を軋ませる。

更新日:2017-04-16 16:44:04