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小説

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意志を殺す犯罪者

 二 意志を殺す犯罪者


 いつのことだったか、私が自転車で神戸へ行ってみないかと、きみを誘った。
 きみはいつものように嫌がる風でもなく、かといって格別嬉しそうでもなく、学校の帰りに寄り道するのと同様な表情でこくりと応じた。その後、どんな風に示し合わせて出発したのか、それとも二三日経ってからことだったか――。
 しっかりとは覚えていないが、朝刊の配達が終わってからのことだったと思う。もしそれが正しいとすると、おそらく夏休み中の出来事だったのだろう。ある意味、子供じみた思い付きがなした提案で、神戸というところに特別の思いがあったわけではない。ただ単にその地点に自転車で行ってみたいから行ってみる――という、ごく単純な理由に過ぎなかった。
 いま憶い返してみれば、なにを見物したいとか、そこがどんなところか探ってみるといった、積極的な意図はまったくなく、ただ走ってそこに到着し、そしてあとは淡々と戻る――というその行為だけで満足する旅だったのだ。

更新日:2017-04-08 13:02:54