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【お題H:秋晴】恋はみずいろ

「いい天気ですねえ」
「・・・そうだな」
隣でお前が、両手を広げてふわあーって深呼吸して。
俺はそんなお前を見て、軽いため息をつく。
隣にいられるのは、あとどれくらい?
来年の夏には、俺は行くけれど。
お前は、どうするんだろう。秋晴れ、晴天の最中。

ヒョン、こっち。イチョウの葉がたくさん落ちている。
きれいな黄色。空気は冷たくても、心は温かくなる。
それは、お前といるからかな。お前がいるから、俺は笑っていられるのかな。
いつでもどこでも、笑顔でいるように、前向きでいられるように心がけてるけど。
本当に、心底幸せだと思えるのは、お前といるときだけだ。
「秋っていいな」
「ですねえ。空も青いし、・・・高いし」
お前は、俺と同じように思ってくれているのかな。
気を遣わせてばかりいる。我慢も、たくさんさせているだろう。
時々チクリと、愚痴を言うけれど。
それ以外は大抵俺を好きにさせてくれる。

空を見上げる。青いし、高い。お前の言うとおりだな。
きれいで、すごく遠くて。
いつもの空だって、手を伸ばしたって届くわけないのに。
それよりもっと遠くて、とても。
苦しくなるんだ。すぐそばにいるのに、あの青空みたいに。

お前は、遠いな。思いながら、スタッフと話しているお前を見たあと。
求められる俺のキャラクター通り、イチョウの葉をかき集めて空に飛ばしてみた。
スタッフと一緒に笑いあって、仕事をこなす。

すごく、貴重で。
かけがえのない、時間。
来年の今頃は、こんな幸せは味わえない。
わかっているからこそ、俺にとって、あの空は遠いのかもしれない。

撮影が一段落して、お前が。
すっと俺の隣に寄り添う。
「なんて顔してるんです」
「・・・ん?」
チャンミンは俺を見て右目を細める。肩をすくめるような仕草を、して。
「消えちゃいそうです。どこにも行かないでください」

少し離れた位置にいるスタッフに、聞こえないように。
韓国語で、小さく。
俺が、そばにいますから。つぶやいて俺を見る、目が。
まっすぐで、キレイで。

ああ、そうだな。お前は変わらない。昔からずっと、そうだった。
どんな時も俺を信じて、俺だけを見つめて、ついてきてくれた。そのお前が。
俺にどれだけ苦労させられても。
俺のそばから離れるわけがない。

お前の心はわからない。わからないけれど。
俺は信じたいんだ。
お前も、俺と同じように、俺を愛してくれていると。
たくさんの時間を重ねても、体を重ねても、心だけはいつも、不安で。
ただお前を愛している自覚だけが俺を突き動かす。

ありがとう。言う、俺に。
何言ってんすか。俺よりはるかに流暢な日本語でそう答える。
やっぱりさ、俺は。
お前じゃなきゃダメなんだ。お前にとっては。
俺じゃなくても大丈夫なのかもしれないけど。

・・・なあ、ずっと。
お前が隣にいると、信じてもいいかな。
愛されていたいと、望んでもいいかな。
俺、バカだから。

一度信じたら、一生、信じるよ。

空に投げる。
思いはかすかに白く青に混じる、吐息。








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秋晴(あきばれ) ホミン bataさまに捧げます。

大好きな曲をタイトルにしたのですが
最後の一行のイメージがしっくりくるものがなく
やはり青空に吐く白い息ならみずいろだな、と。

更新日:2016-11-03 14:12:15

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