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狙われた JC YouTuber

ひよりは、人気急上昇中のYouTuberの一人だった。

人気急上昇の理由は、2つあった。一つ目は、ひよりの率いる動画部が、メディア甲子園で優勝した事。二つ目は、親戚の兄ちゃんKの動画が、YouTubeで、ブレークしたのが、ひよりの動画に飛び火したのだ。

ひよりの通う聖城学園には、メディア・エンターテイメント・コースがあり、そこには、チア、フラ、モダン、クラシック、等のプロを目指す生徒達が、日本中から集まっていた。そして、アナウンサーや、俳優、シナリオライター、映像制作、等のメディア業界のプロを目指す生徒達も、入学していたのだが、県外からの入学枠はメディアコースでは、女優・俳優志望と声楽志望者のみに限られていた。

メディア甲子園では、3年連続で、聖城学園エンターテイメント動画部が、優勝していた。当然ながら日本中のメディア関係者が、注目するわけだが、ひよりは、昨年度のメディア甲子園の動画部門で、部長兼レポーターとして、新人レポーター賞と、団体で、文部科学大臣賞を獲得し、優勝に導いたとして、一般のメディアでも知られる様になってしまったのだ。

3年連続と言っても、実は部員は昨年総入れ替わりをしている。一昨年、2年生の不祥事が、切っ掛けに、甲子園優勝後の一月後には、聖城学園エンターテイメント動画部は解散。3年生は、引退し、新入生は一人も入部しておらず、不祥事を起こした2年生は、自粛。元の部員は、エンターテイメント動画部の復活を許可してもらえなかった。

昨年1年生だったひよりは、周囲に持ち上げられる様にして聖城学園エンターテイメント動画部を新たに立ち上げることになったのだ。立ち上げ当初は、部員は自分ともう一人しかいなかった。新しい部活が成立する為には、本来男女合わせて5人以上が部活設立の条件だったが、メディア甲子園に向けて校長の大号令が掛かり、助っ人部員として、どの部からも兼部が許された。

それで、ひよりは、期間限定で部員をかき集めた。かき集めたと言っても、誰でも良い訳ではない。撮りたい動画の為に必要なキャストを片っ端からリストアップして顧問の浜本雄一に渡し、校長から直々にリストにある一人一人を呼び出し校長自ら交渉してくれたのだ。ほぼ全員、内申書に一言添える事を条件に快諾したのだが、一人だけ頑に断り続けた者がいた。優勝経験のある元部員だ。

仕方なく、その役をひより自らがやってのけたのが、かえって幸いしたのである。それが、ドキュメントタッチの再現ドラマレポーターだったのである。

彼女が、エンターテイメント動画部の顧問、浜本に大抜擢されたのは、小学生の頃から続けていたYouTubeの配信だった。はじめは父と姉も一緒に動画に出演していたが、姉は、都内の大学付属の高校に進学し、父は、海外に出張に行く事が多くなり、この3年ほどは、製作、撮影、出演、全て一人でこなしていた。

動画部の人間は、ひよりの苦手なタイプだったので、数度入部を誘われたが、やんわりと断り続けていたのである。

そして、もう一つYouTuberとして人気が急上昇した理由は、時折自分も出演を依頼されていた親戚のYouTuberが、大ブレークして、YuuuMの傘下に加わった事に理由があった。当然ながら、自分の動画と親戚のKの動画は、リンクしている。Kの動画を見て、ひよりの動画に飛ぶ視聴者が必ずいるのだ。Kの動画では、ひよりは親戚のJKと言う事で、顔を隠し、声も変えてもらっていた。

視聴者の間では、ひよりの動画の主とKの動画に時折出て来るJKが、同一人物か否かが、物議を醸し出していた。そんな、静かに広がる視聴者の間での話題の拡大を楽しんでいたのだが、まさかの大ブレークに繋がる出来事が2ヶ月前に起こったのだ。

馬鹿げた話しだか、ひよりのちょっとしたポロリ映像が、修正がかからずに放映されてしまったのだ。おかしいのは、その動画の修正は、ひより自らが、行ったはずで、その動画をアップしたのも自分であったにもかかわらず、映像には、一瞬ではあるが、俗にいうお宝映像が流れてしまったのである。視聴回数は、噂が拡散した事でうなぎ上りに上昇し一週間後には1000万回まで上がり、三週間目で1500万回で、安定した。広告収入は、凄い事になったが、この動画が不適切とする通報が相次ぎ、親戚のKは、YuuuMとの仮契約が、おじゃんになるかも知れないと頭を抱えた。

実際は、YuuuM側の判断も不適切とまではいかないとして契約は履行されたが、調査して分かった事は、通報の源は、KのYuuuM契約を妬む、他のYouTuberからの嫌がらせであったのである。

3週間で落ち着いたのは、自分達で何度やってみても修正が消えてしまうこの不思議な動画が、YuuuM側の調査が終わり、YuuuM側からYouTube本社に直接掛け合った事で、本来修正した通りの動画が流れる様になり視聴回数は落ち着いたのである。

原因は、解明されないままだった。

更新日:2016-10-11 14:24:59

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