クッキングスクール・パニック その二
事件の予兆はここから始まった。
それは心地よい秋風が頬をなでる十月中旬のことだった。
「灰原、今週の日曜日はさ……部活が休みだからよ、映画でも見に行かねーか?」
ほのかに甘い上品な香りが俺の鼻腔を擽っていく。
指先で髪をかき上げれば、透き通るほど白くてほっそりとした首筋が俺の視線を捉えて離さない。
「熱くねぇーか?」
「ええ、大丈夫よ」
「そっか」
俺は小さく頷くと、最近肩まで伸びた彼女の後ろ髪を手の平でかき上げた。
更新日:2018-06-22 21:14:24