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【第一部】 無自覚な始まり

* この先は新一がとても駄目な男、嫌な奴になってます。
カッコいい工藤新一はいないのでお気をつけ下さい!

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工藤新一はサッカー部の練習を終えると、急いで帰宅し、
シャワーを浴びてから隣の博士の家を訪ねた。

勝手しったる我が家のように、
新一は玄関を開けて家の中へと上がっていく。

「おお、新一、久しぶりじゃのう」

リビングでは阿笠博士が出迎えてくれた。
博士の顔をみたとたん新一の口からは愚痴が飛び出す。

「博士、なんで灰原が帰ってきたことを教えてくれなかったんだよ」

「わしも突然でびっくりしたんじゃよ。
しかも、哀君から志保君になっておったからのう」

「俺もすげぇ驚いたんだぜ」

「ワハハハッ、志保君があまりに綺麗なんで新一も驚いたんじゃな」

「はっ? んなんで驚くかよ! ったく、博士、何言ってんだよ」

「新一、照れんでもいいぞ、ウッハハハ」

今日の博士は自棄にご機嫌だ。
いや、たぶんずっとこの調子に違いない。

「だから、博士、違うって……」

新一が迷惑そうに抗議するが博士は全く聞いていない。
彼女が帰ってきたことがよほど嬉しいらしい。

そんな時、キッチンから志保が顔を覗かせた。

「あら、工藤君、来てたのね。いらっしゃい」

エプロン姿でそう微笑む大人の灰原哀は────
確かに綺麗で可愛かった。
しばらく新一の視線を奪っていた。

「二人とも夕食の準備ができたわよ」
「俺、楽しみにしてたんだぜ」
「志保君は料理が上手いからの、わしも腹がペコペコじゃ!」
「博士、食べ過ぎはダメよ!」
「おめえ、相変わらず厳しいな、あはははっ」

いつもは静かな食卓に今夜は賑やかな笑い声が響いていた。


久しぶりに灰原哀の手料理を堪能した後、ソファに移動すると、
さっそく新一が話を聞かせろよと志保に催促する。

「貴方に何も言わなかったのは……
すぐに帰ってくるとつもりだったからよ」

志保はFBIの事情聴取に協力するために赤井秀一と米国に渡っただけだった。

「それに工藤君、とても忙しそうにしてたみたいだし……
貴方に相談したくても訪ねてもこなかったじゃない?」

志保が厭味ったらしくそう話す。

あの頃は江戸川コナンから工藤新一の姿に一年ぶりに戻ったことで、
「工藤新一が帰ってきたぞ!」と周囲から大歓迎を受け、
毎日、工藤新一としてやるべきことが多くて新一も忙しかったのだ。

確かに忙しさを理由に博士の家に寄り付かなかったのは事実で、
新一には反論する余地もなかった。

更新日:2017-10-27 16:22:08

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未熟なふたり ~ 迷える子羊たち 【コナンで新一×志保】