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新一と志保はあれからずっと手を繋いでいる。

ふとした拍子に手が離れてしまうと、新一が「行くぞ」と言って彼女の手を握る。
また手が離れると、今度は志保の方から「待って」と彼と手を繋ぎ直す。

そうして、二人は新一の言葉通り今日だけはと────
恋人同士のようなひと時を楽しんでいた。

二人が展望フロアから降りてきた頃には、もう空がオレンジ色に染まっている。
新一はタワービルの前で待機しているタクシーに、志保の手を引いて乗り込んだ。

「えっ!? タクシーで帰るの?」
「おめえ、足をひねっただろう」

新一は先ほど志保が転びそうになった際に、足をひねったことを見逃さなかった。
志保が一瞬顔を歪めたのだ。

「さすが名探偵ね、よく見てたわね。でも痛みはないわよ」
「たいしたことなくても無理はしねー方がいいぜ」

なぜか二人ともタクシーに乗ってもまだ手を繋いだままだった。

「なあ、宮野、俺……明日から元の生活に戻ろうと思うんだ」

「今も元の生活に戻ってるじゃない?」

「いや、そうじゃなくて……おめえに出会う前の生活に戻るんだよ。
だから、俺は予備校にも迎えに行かねーけど……気をつけて帰れよ」

志保は新一の真意がいまいちつかめなかったが……
新一にはっきり答えを聞いてはいけないと直感でそう思った。

「前から一人で帰れると言ってたでしょう」

「宮野、おっ、そうだ! あの銀フレームのメガネをかけた男がいただろう。
うちの近所に住んでるとか言うさ、あいつと一緒に帰れよ」

「彼は田中君よ。彼と帰れと貴方に命令される覚えはないわよ」

「まあ、そう言うなよな、何かあって泣くのはおめえだぜ?
そうか、田中君ね……あいつなら真面目そうだし、送ってもらえよ。
おめえにも俺以外の友達ができた方がいいしな」

「あのね、工藤君、私の友達まで貴方が勝手に決めないでよね」

更新日:2017-10-30 08:25:52

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未熟なふたり ~ 迷える子羊たち 【コナンで新一×志保】