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「江戸川君、言っておくけど……
ジンが執着していたのは私の頭脳よ。身体じゃないわ。
貴方、私とジンがいくつ離れてると思ってるのよ。
彼とは何でもないわよ」

灰原がはっきりとそう告げる。

けど、それってオメーは好きだったけど、
相手にされなかったってことじゃねーのかよ。

気にしないと言いながらしっかり気にしている。
彼女のこととなると冷静さに欠けてくる。

「でも、オメーはジンが好きだったんだろう?」

ほら、口が勝手に動いている。
聞くつもりなんかなかったのに。

彼女が呆れたようにため息をつく。

「……バカね、貴方は私の何を見てきたのかしら?
そうよね……貴方は蘭さんに夢中だったものね。仕方ないわね」

「ごめん……」

彼女のガッカリした顔に俺は咄嗟に謝っていた。

「バカッ! 謝らないでよ……。私が余計に惨めになるわ」

(俺、今は本当にオメーだけで……オメーが好きで好きで欲しくて……
誰にも触らせたくなくて……俺だけのものにしたくて……)

そう口に出すのは簡単だけど、きっと俺の思いは伝わらない。

何も言えない俺に向かって彼女が告白する。

「江戸川君、本気で好きだと思ったのは貴方が初めてよ。
貴方が蘭さんしか見てない時も……私を守ってくれると言った時も……
貴方の相棒になった時も……アメリカまで会いに来てくれた時も……
江戸川君、私は貴方がずっと好きだったわ」

彼女がこれほどまでに好きでいてくれたのに俺は気づいてもいなかった。

(灰原、オメーを疑ってごめんな)

俺も彼女がたまらなく好きだ。
好きだから、他の男にも何度も嫉妬して……

けれど、今、俺のできることは───

「灰原」

ただ彼女の名を呼ぶと、腕の中に抱きしめた。

さっきは震えるほど寒かったのに俺の全身が熱くなっていく。

彼女の声が耳元を掠める。

「ねぇ、江戸川君、電気消してよ」

そう言えば、天井のライトがついたままだった。
俺はベッドサイドのライトをつけると、部屋の明かりを消しに行く。

更新日:2018-06-17 23:06:15

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