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【H】Hear the sound of rain

抱き合うと、すべてを忘れる。
いやなこと全部。
いいことは一つも忘れない。だって抱きしめているから。
抱き合っているから。
口付けると不意に、甘く香るあなたの、髪。
うなじに口付けて、もっと、欲しいって。
お前の方が可愛いよ。そう、言うのを。
可愛いって、女みたいなこと言うな。笑いながら、軽く叩く。
雨音が好きなんだ。あなたを抱いた日に、聞こえた、音だから。
雨音が聞こえる夜、一人でいると、無性に、寂しくて。
幸せって本当になんでもないこと。
俺にとっては、あなたが傍にいること。
ああでもきっとそれだけじゃ足りないんだよ。
あなたが俺を好きで、俺だけを見て、俺だけを愛すること・・・わがまま?
俺になら許される・・・そう、思わない?

あなたが俺の体に入るとき、俺はいつも息を詰めて、そしてゆっくりと息を吐いて。
あなたに快感の照準を合わせる。一緒に・・・イケるように。
繰り返す動きに、時折どうしようもなく感じすぎて、はじけそうなときに。
肩を甘噛みされて、ふたりで笑いあう。

好きなんだ。どうしようもない。愛してる。たとえようも、ない。
誰よりも、何よりも。
この動きの先の白い闇の中でいつもあなたと見る夢が好きだ。
愛されてるって感じるから。愛されてるって分かるから。そして。
この雨音みたいに、ずっと。
祝福の拍手の中で、愛を交わす。
100の誓いより、1000の言葉より、見つめ合うだけで。
愛し合ったあとの余韻は、甘い倦怠に満ちる。

ずっと・・・こうしてて。ずっと。
寝ても覚めても、あなたの、腕の中に。

更新日:2022-01-15 19:56:39

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