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会いたい

素直にリハビリを始めたテミンの足は、順調に回復して。
最近はダンスの練習も始めたので、それにミノが付き合っている。

「んー、やっぱりダンスが一番!」

踊れないことが何だかんだ言ってストレスになっていたらしく、練習室に行く日は朝からご機嫌。
ひとしきり踊れば、いつも嬉しそうな顔で床に大の字になっている。

「そういえば、来月またツアーだよな?」

ありがたいことに今年は頻繁にコンサートやツアーが組まれていて、あと少しで海外でのツアーが始まる。
とはいえ全く自分でスケジュール管理ができていないテミンは、「そうだっけ?」と呑気な声を出して床に寝転がっていた体を起こした。

「ヒョンも出る?」

「ツアー?」

「うん。最近元気だから出れるんじゃない?」

そう簡単に言うけれど。
さすがにすぐに返事はできなくて、ミノは曖昧に笑った。

「今日病院行ったら聞いてみるよ」

「一緒に出れると良いね。」

にこっと微笑んで、テミンは再び大の字。

「次はどこ行くんだったかなー」

以前は基本的にアジア圏だけだったのに、今年はその枠を跳び越えて新しい国を開拓したせいか、ツアーの開催国がよく分からなくなっているらしい。

「上海はこの前行ったし…」

「今度は日本でツアーだろ?」

「そっか!それならヒョンも一緒に行かないと。」

「なんで?」

「だって、休むことにしたらどれだけ会えないと思ってるの?」

かなりの日数が組まれている日本ツアー。
行ったきりではないとはいえ、参加しないことになればテミンと一緒にいる時間は確実に減ってしまう。

「曲数減らしてでもいいから、絶対出ないとね。」

勝手にそう決め込んで深く頷くテミンの顔を、ミノは笑いながら上から覗き込んだ。

すると何を思ったのだろう。
何かを受け入れるように静かに目を閉じたテミンに、ミノはなんだか可笑しくて吹き出す。

「えっ、なんで笑うの?」

「お前、勘違いしすぎ」

「別に、ただ目瞑っただけだもん。勘違いしてるのはミノヒョンの方だよ」

平然とそう言ってのけるけれど、そっぽを向いたテミンの頬は赤くて。

「期待した?」

「してないっ!」

言い返す語気の強さが、照れ隠しのようで愛おしい。
寝転ぶテミンの顔の横に手を突き、染まった頬に顔を近付けたところで。

「はい、そこまでっ!」

バンッと物凄い音を立てて練習室に入ってきたキボムに、ミノは咄嗟に顔を上げた。


更新日:2014-10-07 02:58:12

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