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愛の形

季節は夏、秋、冬、春、と巡って。
再び夏を迎えていた。

先日20回目の誕生日をオニュとユジンに祝ってもらったテミンは、相変わらず大学が終わるとカフェに寄っている。
2年生になり少しだけ授業も減って、カフェにいる時間が長くなった。

とはいえ最近はカフェにいても、ため息を吐いてばかり。
去年までは窓からミノが見れるだけで幸せだったのに、今年に入ってからはその姿を見ると無性に恋しくなってしまって。
ジョンヒョンにも心配されている。

今日もいつも通りビルの2階へ上がると。
『Close』のプレートが下がったカフェの前に、ジョンヒョンが立っていた。

「あ、やっぱり来た。」

「え…?」

「今日は臨時休業で休みだって、昨日言っただろ?忘れちゃった?」

「そう…だっけ?」

「そうなんだなー。」

大きな口が柔らかい弧を描き、ジョンヒョンが優しくテミンの手を取る。

「こんなこともあろうかと、迎えに来た。オニュさんの仕事が終わるまで一緒に暇潰そう。」

今年に入ってからも色々とやらかしたテミンの付き添いで何度か駅まで送り届けてもらっていることもあり、すっかりオニュとは顔見知り。
ジョンヒョンは躊躇いもなくテミンを連れて街に出た。

駅から大学とは反対方向に5分ほど歩けば、閑静な住宅地が広がっていて。
ジョンヒョンが立ち止まった先には、小さなアパートがあった。

「…ここは?」

「俺の家。」

2階の角部屋らしく、ジョンヒョンは鍵を開けて中に入る。

「ただいまー」

見るからに一人暮らしという感じの静かな部屋に向かってそう言うジョンヒョンに促されて中に入ると、リビングに人影があった。

「え…、誰かいるの?」

「いいから、入って。」

恐る恐る中に入れば、黒髪の色白な青年がソファーに座っている。

「あ、あの…お邪魔します。」

小さく声を掛けると、一瞬だけ青年と目が合ったもののすぐに逸らされた。
感情のない、虚ろな目。
あまりの冷たさに、テミンの顔が強張る。

「キーくん、テミンだよ。いつも話してるだろ?」

青年と目を合せるように、目の前で少し屈んで話すジョンヒョン。
すると初めてその存在に気付いたように、その瞳が生気を取り戻した。

「ヒョン、お帰りなさい」

漆黒の綺麗な瞳を真っ直ぐにジョンヒョンに向けて微笑む姿。
それに応えるように、ジョンヒョンはいつも見せる笑顔よりも更に優しく笑う。

「ただいま。一人で大丈夫だった?」

「うん。」

キボムが頷いたのを確認してから、ようやくジョンヒョンがテミンに向き直ってくれた。

「キボムって言うんだ。俺はキーくんって呼んでるけど。」

「えっと…ヒョンの……」

「恋人。」

「へ?あ…、そうなんだ」

呆然としているテミンに、ジョンヒョンは頷いて微笑んだ。


更新日:2013-12-13 22:02:31

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