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白騎士、命を受け継ぐ者

 俺が不死鳥同盟に来てから、二日ほどが経った。
 アイネはその間全くアジトを訪れてくれず、俺は切ない想いを強いられていた。
 ……そしてそれは、結構顔に出ていたらしい。まだ俺がここに来てからほんの僅かな時間しか経っていないと言うのに、俺がアイネに片想いしていることは、もうすっかり知れ渡ってしまっていた。
 しかしそれが功を奏してか、俺は存外すんなりとこの新しい居場所に溶け込むことが出来たのだった。……アイネには本当に、感謝せねばなるまい。

「ハルクにーちゃん! ご本読んでー!」
「あぁ、ちょっと待ってな。今行くよ。」

 俺は双子の弟で、他に兄弟など居なかった。だからこうして“兄”と慕われるのは生まれて初めてのことだった。
 ……でも、そのように振舞う事自体は、もうすっかり慣れたものだった。
 何せゼンカは、昔は物凄く臆病で、とても手の掛かる兄貴だったからだ。
 所詮、一瞬早く生まれただけの、仮初の“兄”と“弟”の区別だ。
 本当は俺の方が、“兄”だったのかも知れない。
 例えば、そう……。怖がりな癖に好奇心旺盛なゼンカが早く外の世界を拝みたいと言うから、渋々先に生まれさせてやったんだ――と言っても、案外本当に過言では無いのかも知れないくらいに。
 子供たちに本を読んでやったり、一緒に山の中を走り回ったり。
 “翼”を持つ者は身体能力が人間を大きく超えているから、少しくらい派手に暴れても全く問題無いと言うのが新鮮だった。
 でも、外が暗くなれば家の中に駆け込むし、おなかが空けばご飯だって食べる。朝昼晩の三食に、午後三時はおやつの時間。子供たちには昼寝の時間さえも決められていて、その容姿以外、彼らは人間と何も変わらなかった。
 この家のルールを作ったのは、どうやらアイネらしい。彼女は近くの街で、孤児院の院長と言う立場に立っているようで、子供の扱い方に関してはここの誰よりも優れていた。

「……ハルク。ちょっといいか?」

 庭の木陰で子供たちに絵本を読んでやっていると、突然ナイトメアがやってきて俺に声を掛けた。普段、彼はどこかに出かけていて、アイネほどではないがあまりここにはいない。だから声を掛けられた時、俺は少しだけ驚いた。
 ナイトメアの表情は、少し沈痛な面持ちだった。子供たちには解らないだろうが、俺には何となく、それが感じ取れた。

「……? どうした、ナイトメア。」
「話がある。俺の部屋に来てくれ。」

更新日:2009-02-12 19:31:25

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