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第7話「脱力気分」


『んー疲れたー!』
「なんで」
『色々あったのですよ』


何も変わらない、
至って日常的な放課後。

いつも通り、春日に雅
そしてあたしという、おなじみメンバーで下校する。


「そいえば卯月さ、
 朝学活サボったんでしょ?」


少し前を歩いていた雅が
思い出したように、振り向いてそう言う。


『え』
「なんか噂で聞いた。
 夏樹とかが言ってたよ?」


あー夏樹。

...てかクラス違うじゃん。


『...なんで夏樹』
「あ、それ犯人は私」


ゆるーい挙手をした春日に
ばっと視線を向ける。


『えなんで!』
「あはー」
『いや、あはーじゃないから!』


ダメだ。

いつものほほーんとしてるからって
油断してた。

春日って案外おそろしい。


「なんで今朝サボったの?
 そいえば放送も流れなかったよね」
『...あはー』
「あ、真似された」


なんとなくやり過ごしたものの
動揺がおさまらない。

あの時のことを聞かれるたび
...いや、というか今日はずっと

それがあたしの頭を埋め尽くしてる。


「神埼に聞いたらわかるかなー」


今日のことを考えてる脳の中に
とんでもない発言が入り込んできた。


『はぁ?!』


やっぱり春日は
恐ろしい。


「だってほら
 そこに神埼」


やっぱりゆるーく、指を差す。

その先は、斜め前の
神埼と山崎。


『いややめよう、うん』
「雅いってこーい」
「はーい」
『ねー無視しないでよ!』


あたしの嘆きに、全く聞く耳を持たない。

もう泣きたい。


なんて思ってるにも関わらず
スタスタと神埼のもとへ歩く雅。


『もー帰るー!』


視界の隅には、雅と神埼。
もちろん山崎もだけど、どうでもいい。


「あ、雅きたー」


あまりにスロートークで

言い終わる前に、とっくに雅が
目の前に来ていた。


「なんだってー?」
「んーなんかね
 篠原に聞けだって」


その返答に、思わず
肩の力が抜けた。


「卯月と同じこと言ってる(笑)」
「ね、笑いそうになった」


なんだかもう
隠すのも面倒になってきたな。

そう思えるほどに、
だるい気分だった。


『今度話すよ』


ずり落ちかけた鞄をかけなおして
再び、歩き始めた。



今日の風は、なんだかすごく
爽やかに感じた。

更新日:2013-04-06 19:04:52

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