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とうとうアポロンは我慢しきれなくなり、父親の不在をいいことに、家の中にあがりこんでダフネの着物に手をかけた。

「こうなったら、実力行使や」

「何しはりますのん」

「手籠めにしたる!」

「あきまへん」

「わては、神や!あかんことない」

そういうと、アポロンは後ろからダフネをはがいじめにし、着物のあわせ目からから手を差し入れて胸をまさぐった。

「嫌どすっ!」「やめとくなはれ!」

ダフネは、身をよじって抵抗した。

「いやよいやよも、好きのうち!わてのもんに、なってくれ」

アポロンは、激しく抵抗するダフネを畳の上に押したおそうとしたが、その瞬間、手が緩んだ。

その隙を逃さず、ダフネがアポロンを思いきり突き飛ばす。

アポロンは、背中から土間に投げ出され、したたかに腰を打った。

うめくアポロンをそのままに、ダフネは裸足のまま外へと飛び出した。

「なんちゅう、おなごや」

アポロンは腰をさすりながら起き上がり、よたよたとダフネのあとを追った。

ダフネは、三条大橋をわたり、河原町通りへ向かって走った。

そのまま河原町通りを北上し、葵橋を渡って下鴨本通りへ入る。

下賀茂神社を右手に下鴨本通りを全速力で走り抜け、洛北高校を超え、ノートルダム女子大学の角を右へ曲がった。

息が切れ着物の裾が乱れたが、気にしてはいられなかった。

桃割れに結っていた髪がほどけ、おくれ毛が後ろへたなびく。

自分があられもない姿で公道を走っていることはわかっていたが、貞操の危機にそんなことはかまっていられなかった。

更新日:2013-03-04 13:39:46

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