• 11 / 29 ページ

「White snow」 第一章 -黄金の月ー 7

それから父の体の回復は目に見えてしてきた、強い薬を投与している分回復は著しい

その反面、薬の副作用が見えた・・・

父の髪は抜け始め薄くなり始めた、それでも父が元気であれば髪の毛ぐらいは大した問題じゃない、

そう思った・・・・



だけど・・少しショックな事は・・・



父は人の認識が出来ていないようだった・・家族の事を思い出せない・・

私が娘である事すら覚えていない・・話は出来るようになったけど、私に対して



「いつも・・すみま・・せん」と敬語で話す・・・



とても、とても辛かった・・・でも、この世に父が存在しいつの日かこの症状も治るんだと信じた・・・



先生が言っていた薬の副作用とはこういう事だったのか・・・それでも家族の愛があればきっとお父さんはいつものお父さんに戻れるはず、「泣いてなんていられない・・・」そう思った



私は今迄通り、いつも通り学校の帰りには自分の受診を兼ねてお見舞いに行った、そこでいつも通り

話をしながら時間を過ごした、父はあまり語ることなく微笑んで話を聞いてくれた、だけど体が辛いのだろう直ぐに寝てしまう事も多かった



昏睡状態から、目があけれて片言でも言葉を言えて、認識が出来なくても私と居てくれる

父が愛おしい気持ちでいっぱいだった



数日後・・



ひとみは学校が終わると花屋に寄った、父の部屋の花を変えようと思っての事だった

花とかに興味のある父ではなかったけど、少しでも部屋も気持ちも明るい雰囲気にしたいと思ってた



「お父さん、早く良くなってね」



病室へ着くと父は眠っていた、ここ数日間、癌の痛みが激しくて薬を多めにしたと主治医から聞かされていた

次の日も次の日もお見舞いに行くと父は眠っていた、日中は何度か起きることもあるようだけど私が行くときは寝ていた、それでも父の顔を見れればそれで良かった



翌日・・



いつものように病室へ向かい父へただいまの挨拶をして花の水を変えようと花瓶を手に取った・・・



その日はとても穏やかな日で不思議と時間の流れがゆっくりと感じていた・・







『ひ・・とみ・・・』







『ぇっ・・?』





花瓶を持ったまま振り返った





『お父さん・・ひとみの事わかるの!?』






『あぁ・・わかるとも・・・』





慌てて花瓶を置いた





『お父さん、お父さん』




まともに話すことも出来なかった、娘の名前すら発する事の無かった父が・・・

我慢していた涙がとめどなく溢れ出た・・・・



父は良くなってきている、癌にも負けてない、神様・・本当に本当にありがとう・・・



痩せ細った手で縋りつくひとみの頭を弱弱しくなでる幸弘(父)






『今まで苦労かけたな・・・』





『全然苦労なんかじゃない、お父さんが元気になる事ばかり考えてた』





口から出る言葉は文章にならないほど沢山な想いが溢れ出た

更新日:2013-05-19 16:27:20

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook