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第十章、出来事

挿絵 388*70

この物語はフィクションで、登場する人物や建物は実際には、存在いたしません。
尚この技は架空であり、実際に物理的に出来る技では有りません。

オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1536491.html



一ヶ月が過ぎて、今日は竜彦の作品の展覧会である。


市内の美術館の一角を借りて、


玲菜を描いた作品のお披露目であった。


受付には竜彦と玲菜が立っていた。


無論スケートを華麗に滑る作品が多く、


竜彦成りのアレンジが加えられていた。


広く凍った湖で 一人玲菜が滑る優雅な姿や、


ジャンプして天に舞い上がる姿。


氷の湖で妖精達が周りを囲みその中で、玲菜が回転をしている姿が描かれていた。


その他には掛け布団を巻いて、俯いている姿や頬から涙が伝っている姿。


或いは秋の風景の並木道を、玲菜が一人で歩く姿などが飾られていた。


どの作品もギャラリーを魅了させていた。


すると受付に一人の男性が佇んだ。


美術鑑定士の水野であった。


水野は玲菜を見るなり、「いつ見ても美しいね勝田君のフィアンセは。


いつ結婚するんだい」と、称えられると竜彦は、


「はい、来年挙式を挙げるつもりです」と、答えた。


玲菜も一つ頭を下げて、「頼りっ放しの情けない嫁に成りそうですが、


これからがんばって彼のお役に立てる様、


心掛けて行きたいと思っています。


宜しくお願いします」と、謙遜すると水野は、


「今でも十分役に立っているよ。


もう全ての作品が高額で買い手が付いている。


これは全てフィアンセである、玲菜ちゃんのお陰だろ」と、


尋ねると竜彦は、「はいその通りです。


と、言うよりそうさせました。


彼女はいつも僕に頼るのが、申し訳なく感じている様なので、


彼女を使って作品を出す事で、彼女にも僕の創作活動に、


一躍買って貰うつもりです」と、出展への趣旨を述べた。


水野は趣旨を把握した様で、「なるほど、


それも玲菜ちゃんに対する、勝田君の愛情だな」と、納得していた。


玲菜は、「有難う御座います」と、頭を下げると、


水野は微笑んで、作品を鑑賞しに受付を跡にしたのであった。


玲菜はその夜、大滝スケートリンクで練習をしていた。


リンクの上には、玲菜と真理だけが滑っていた。


真理は時より玲菜の手解きをする為に、スケートシューズを履いて、


一緒に氷のリンクの上で滑っていた。


自ら玲菜の手を引いて、


励ましていたり、技の指導をしたりともう既に専属のコーチであった。


真理は高校中退後、直ぐに美容師に成り努力して、


自力で美容室を開業し、若い美容師達を多く育てて来た経験もあり、


元スケーターでは無くても、教えると言う事には優れていた。


今では美容室のオーナーではあるが、経営の方は口を出さずに、


スタッフ達に任せていた。


そうする事でスタッフ達は、仕事に対する意欲が増して行った。


真理は自分の担当するお客からの、予約が入ると店に出向く様で、


売り上げも経費を除いて、


スタッフとオーナーは対等で支払われていた。


そんな玲菜と真理をリンクの外でベンチに座り、


スケッチブックにデッサンする竜彦だった。


真理と玲菜はリンクの上ではしゃぎながら、練習に励んでいた。


はしゃぎながら玲菜は、切れの良いルッツを決めると、


手を叩いて玲菜を称える真理であった。


そして玲菜の手を取り、社交ダンスを踊る様に玲菜を回転させると、


その場で玲菜を抱きしめる真理は、「最初に玲菜をここで見た時よりも、


数段技の切れが良くなったね。


ふっきれたんだ」と、


問いかけると玲菜は抱きしめられながら、


「まだ完全に吹っ切れた訳ではないけど、


少し安心したかな」と、告げた。


更新日:2013-01-31 17:31:43

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★ アイス エルフィン (氷の上のやんちゃな妖精)