プロローグ
ニューヨークの中心、マンハッタンを南北に横切るブロードウェイ。
劇場街から少し外れた位置にある小さなスタジオの中に、ひとりの美青年が吸い込まれるように消えていく。
額にかかった黒に近い深い茶に染まった柔らかそうな髪。
透けるように白い肌。
頼りなげな華奢な身体。
以前と何も変わらないように見えるけれど。
今の彼にあるのは、6ヶ月と16日の記憶だけ。
ただひとつだけ、憶えていたかったのに。
遠く離れた異国の地で恋い焦がれ苦しんでいるあの人のことを…。
更新日:2013-01-17 16:23:23