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第3話「残念な日」

「教科書、ノート
 忘れ物はいますかー?」

英語の時間。
最悪なことが起こった。

『・・・はい
 教科書忘れました』

英語の授業は
ノート忘れの場合、他のノートに書けばいいんだけど

教科書の場合は
隣の人に、見せてもらわなきゃいけない。

「じゃー隣の人にお願いして
 机よせて見せてもらってください」

・・・ですよね。

『あ・・・あの・・・』

武田にむかって、小さく呼ぶ。

どうしよう。
気まずい。

本田は、聞こえてない様子。

・・・本当どうしよう。
大きい声出す空気じゃないし。

『・・・』

なんとかして
目線を送る。

だけど全く、気付かない。

「・・・あれ、武田
 木下に教科書・・・」

後ろから、さりげなく武田に声をかけたのは

中原。

「・・・あー、そっか」
『お願いしても
 ・・・いいでしょうか』
「・・・ああ」

静かな教室に
チョークと黒板がぶつかる音と

机を引きずる音が響いた。


武田が無言のまま、教科書をあたし側に寄せる。

完全にくっつけられなかった机と机の距離が
なんとなく、切ない。

『・・・』

にしても
逆光で教科書が見えん。

さーて。
どうしますかね。

勝手に触るのはとりあえずNGでしょ?
・・・声をかけてみる?
いやいや、だから無理でしょって。


なんて自問自答してると
武田がさりげなく、肘で教科書をずらした。

『!』

一気に、見やすくなった。

・・・もしかして、気付いてくれたのかな。
いやいや
考え方が図々しすぎる。

「ここは2年で習ったはずだから
 当てちゃうぞー」

先生の言葉に、今が授業中ってことを
思い出した。

慌てて黒板に目を戻す。

「じゃー・・・
 木下」

・・・ついてない。

いや、教科書忘れる時点でついてない。

『あー・・・っと』

あたし
ピンチかも。

問題聞いてなかったし
聞いても分かんないかもだし。

「聞いてなかったのか?」

怒られる・・・!

そう思った瞬間
武田がノートに、ペンを走らせた。

そこに書かれていたのは

“be動詞”

だった。

『えっ』
「ん?わかったのか?」
『えっと・・・』

もしかして。

いや、でも
もし違ったら・・・。

『・・・はい』

でもあたしは
武田の優しさを信じる。

『be動詞です』
「よし、正解」

・・・やっぱこれ
答え、書いてくれたんだ。

『あのっ、ありが「じゃあ今日はここまでだな」』

・・・え?

「きりーつ
 れーい」

待って嘘。

「次の持ち物は
 いつも通りだからなー」

授業時間すぎを表す時計と、
教室を出て行く武田を

ただただ、交互に見つめた。

『本っ当
 ついてない・・・』

更新日:2013-01-08 20:21:32