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~Side裕也~

「うわ・・・
 すっごいほこり・・・」

資料室のドアをあける。

薄暗い部屋に、窓から日が差して
その線上にほこりロードが見える。

あまりに咳が出そうで
窓を開けた。

「えーっと・・・」

渡された資料を、指定のファイルにしまう。

そう頼まれたけど
ごちゃごちゃしてて見つからない。

『探してるの、これ?』

目の前に差し出されたファイルは
“2013年8月”と書かれている。

「あ、これ・・・」

お礼を言おうと、その人の目を合わせた。

すると、それは

「・・・木下」

なんで、ここに?

考えようとしても
頭がまわらない。

こんな至近距離に木下がくることは
もう、ないと思ってたから。

『結衣のかわりに・・・うん』
「そっか」

無理だ。

早く出よう。

こんなすぐ近くにいたら
おかしくなりそう。

「じゃあ先戻るから」

そう言い残して、資料室を後にしようとした
その時

『・・・待って』

控えめな声が
俺の耳に、止まった。

『えっと
 話したいことがあって・・・』

嫌というほどに伝わる
木下の中の、緊張感。

・・・当たり前だよな。
フった相手だし。

「俺はもう
 話すことないけど」

本当は
すぐに優しく、聞いてあげたい。

だけど

そんなことをしたら、ずっと
木下を引きずりそうになる。

好きじゃないから断られたのに
ずっと、惚れ続けたくなる。


ごめん。
もう、俺さ

そんな余裕ないんだ。

『・・・』
「じゃーな」

振り向くことなく
そのまま、ドアを閉めた。

更新日:2013-02-10 09:58:47

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