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ワカバタウン


身体が思うように動かねぇ。

辺りが暗く、静かで、何も感じねぇ。

瞼ひとつ微動だにせず、声も発する事も叶わず、息遣いさえも許されず、身体が凍えて過ぎて震えさえ止まってしまう。

俺は……このまま死んでいくのか……?

……とうとう足の指先にまで、力が入らなくなった。体中の血が遅滞している。寒いとも言い難く、冷たいとも言い難い。

ただ、身体が凍えていく。まるで、自分の身体が、他人の身体に思えてくる。馬鹿みてぇに四肢を放り投げた、糸の切れたマリオネットのように……。

……?

……誰かが俺を揺すってやがるな。
熱いのか冷たいのか解らない程、感覚器官が麻痺していた俺の外皮から、ほんのりと暖かな生気のようなものを感じ取れたも

何をされたかぐらいは理解できた。だが、意識がすでに朦朧としている。

ここで死ぬなんでゴメンだ、誰だか知らないが、俺の目が覚めるまで強く揺すり続けてもらいたい……。


……?

……左胸?

継続的に、間を置いて、テンポよく、俺の左側の胸部が圧迫される。

……心臓部を中心に、体の内から、あたたかな温度を感じ取れ始めた。

ただ、俺を押して圧迫している誰かの手。

……冷てぇ手だった。水に濡れてるのか?

……水?濡れてる?俺も?


……そうだった、思い出した。

テンポよく胸を押していた手の感覚がいつの間にか無くなっていた。
再び、静寂が押し寄せる。

俺、コイツに……。




次の瞬間……。

「(……あったけえ)」

一気に、身体が火照るようだった。
さっきの心臓マッサージよりもだいぶ楽になった。俺の呼吸気管を中継して、暖かい春の様な風が、俺の全体の温度を上げていく。

俺の口から喉へ、肺へ、胸へ、腹へ、そして全体へと……。

……?

……なんで口から?

うっすらと目を開けた。

その瞬間、今まで感じた事のない未知なる感覚が、唇から伝わる。

今まで匂った事のない甘美な香りが、鼻腔に広がる。

やがて意識が覚醒し、俺の体温が一気に上昇を開始した。


「……!?……(がぽぉ!)」

胃から逆流した水が、勢いよく口の中から外へと吹き出した。

更新日:2015-01-18 01:38:43

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ポケットモンスター金銀クリスタル 【水縛りの冒険】/ポケモン