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好きだよ

「ミノヒョン、お腹空いたー」

天使のように可愛い末っ子は、今日も優しい兄に甘えた声を出す。

ただオニュを追うテミンを後ろから見守っていた頃が嘘のようだ。
いつの間にか、自分のものになったような錯覚さえ起こすほどテミンが近くなった。

「何食べる?」

「んーとね、何がいいかな…。チャーハンとか、オムレツとか、カレーとか。」

ミノは冷蔵庫を開けて、何があるかを確かめる。
チャーハンは昨日食べたばかりだし、カレーは確か固形のルーを使い切ってしまって買い出しに行かないと作れない。

「オムレツでいい?」

「うん!」

普段はキボムが立つキッチンにミノが立ち、手際よくオムレツを作る。


「よし、完成」

目の前に出されたオムレツを見て、テミンは目を輝かせた。

「すごーい!ヒョンってやっぱり料理上手だ!キーヒョンが作ってくれるのもおいしいけど、僕、ミノヒョンのも好きだよ。」

おいしそうにぱくぱくとオムレツを食べるテミンを見ながら、ミノは何もせずテミンの前に座っている。

「…ヒョン、後片付けは?」

「片付け?ほとんど終わってるよ。フライパンはテミンが食べ終わったら洗う。」

「そっか」

「何?どうかした?」

上目使いで見てくるテミンにミノが聞くと、少し照れくさそうにテミンが俯いた。

「…あんまり見ないで。食べらんないよ。」

「え?…あ、ごめん。」

普段は色の変わらない真っ白な頬と耳元が赤く染まっているような気がして、口では謝りつつミノは思わず見とれてしまった。
再び上目使いで顔を上げたテミンは、今度こそ真っ赤になって慌てたように顔を逸らす。

「もー、あっち向いてて!あっち!」

何もない壁を指を差して必死になっているテミンが可愛くて、思わず抱きしめたくなってしまう。
それをぐっとこらえ、ミノは言われたとおりに壁に視線を移した。

「これでいい?」

「うん。こっち向いちゃだめだよ。」

「…テミナ、これ、結構首疲れるんだけど。」

「もうすぐ終わるから我慢して!」

「はいはい。」

視線は外れていても、一生懸命食べているテミンの姿は視界に入る。
早く食べようと必死なテミンはオムレツを口に頬張りすぎて、まるで頬を膨らませたリスのようだ。

「もう少しゆっくり食べたら?」

「んー!」

そう言って視線を戻そうとしたミノに、テミンは声にならない声を上げる。

「一度に口に入れすぎだよ。水持ってくる。」

立ち上がったミノの後姿をテミンが食べることも忘れてずっと目で追っていることなど気付くはずもなく、ミノは再びキッチンに戻った。


更新日:2013-01-07 23:07:59

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君と過ごした最後の夏 SHINee Minho*Taemin