官能小説

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公安の怪物

 かつて血腥い惨劇の舞台となった高級マンションは跡形もなく取り壊され、
いまでは更地になっている。
 花束を置いて足早に立ち去った。
 全身の気怠さ、時折襲ってくる死にそうなほどの激痛。それも鎮痛剤を呑めば不思議と落ち着く。
 目の前に黒いスーツの男が現れた。
相変わらずポーカーフェイスの霧島が迎えに現れたようだ。

「戻りましょう、警視正」
「お前は寄って行かないのか?」
「自分には関係ありませんから」

 霧島は感情を無くした。
 あれ以来、霧島が本心を見せたことはない。
 公安総務課《ZERO》の作業班を率いていた頃から”私”を殺し、
公に奉仕するーー霧島が仕えるのは龍崎だけだった。
”公安の怪物”などと呼ばれているが気にしない。
 公安警察が作り上げた鬼子だ。
 公安の存在意義は冷戦終結とともに崩れ去ったが、
公安幹部や警察庁の連中はそれを恥じることなく国民のためなど言う。
公安警察が守るのは国家国体であって国民ではない。
 優秀な警察官は中野学校で洗脳され、優秀かつ非情な公安警察官に豹変する。
 龍崎もかつてはそれを信じていたし、恐らく霧島も‥‥。

「あれから何年経つ?」
「‥‥10年です」
 
 10年か‥‥権藤への復讐を誓った。
 あれから時計の針は止まったまま、
 周りの時間だけが流れている。
 公安部長は権藤に深入りするなと忠告、いや恫喝してきた。
 警察組織は権藤によって汚染され、果ては政治家経由で圧力を掛けられる。
明らかに国益を脅かす存在だと言うのに警察も検察も捜査に尻込み、
マスコミは権藤を時代の寵児などと持て囃す‥‥。
 全ては主流派から干されておかしくなった男の妄想だと片付けられ、
鼻で嗤う連中からの蔑みの視線に晒される。
 何も変わらない。

更新日:2019-06-20 22:04:55

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