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小説

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8、奴隷奪還

 ヴァティールの提案は生きる気力さえ失った俺に一筋の希望を与えた。

 国を滅ぼしてしまった罪は、今更どんなことをしようと償えるものではない。
 まして今の俺には死んで詫びる事すら出来ないのだ。

 しかし、この手であの優しく平和な国をもう一度作り上げるチャンスが与えられているというのなら、それに縋ってみたかった。

 別に自分のためじゃない。

 俺の巻き添えのような形で呪いをかけられたリオンを解き放ってやりたかったし、残された国民たちのことも気になる。
 我が国の民たちは戦に負けたのだから多分過酷な状況に置かれているだろう。

 身一つだとしても逃げ出せたならまだ良い。
 捕まれば鎖で繋がれて奴隷として連行される。
 その先に人間らしい暮らしはもう無い。

 野蛮な国の従属物として泥を舐めながら生きるしかないのだ。



 火葬をすませた後、ヴァティールにうながされた俺は更なる高台へと登った。そして城の方角を見る。
 さすがに連日くすぶっていた火はもう消え、遠目には以前とさほど変わらない。

 リオンの体に取り付いた魔獣ヴァティールは強い風の中、城や森ををあの紅い瞳で見下ろしている。


 ヴァティールの魔力は今は魔縛によってほとんどが失われているが、それでも視力は人間の数十倍らしい。
 遠くを見渡すことのできる魔眼があれば奇襲にふさわしい場所を選定するのに役に立つ。

「あそこがいいんじゃないか? 帝国に向かう一番の近道はあの細い街道だ」

 

更新日:2013-09-30 15:43:41

滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)