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小説

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7.呪い

 死の世界は現実にとてもよく似ている。

 再び目を開けた俺は、まだ自分が死んだ場所に留まっていることを知った。
 確か自縛霊とか言ったっけ。
 成仏できずにその場所で苦しみながら縛られる霊魂を。

 なんて俺にふさわしいのだろう。

 ただ、王子である俺が自縛霊になるなんて数ヶ月前には思いもしなかった。
 ため息をついていると腕の中の弟がぱちりと赤い瞳を開いた。

「お前も自縛霊になってしまったのか。可哀相に」

 ぎゅっと抱きしめるとその体は生きてるかのように温かい。

「離せ、人間」

 冷たい声がリオンの口から漏れ、俺の腕が払いのけられる。

「……リオン?」

 恐る恐る呼びかけるとリオンは不遜な口調で俺に怒鳴った。

「誰が自縛霊だ。失敬な!!! 我が名は魔獣ヴァティール。強く気高く誇り高い上級魔族だ!!」

「魔、獣……?」

「ああそうだ。大昔、腐れ魔導師のアースラに卑怯な手段で捕らえられ、以後300年間魔力を搾り取られてきた悲遇の魔獣がこのワタシだ。
 本来ならクロスⅧであるリオンとやらに魔縛されたまま受け継がれ支配されるはずだったが、仮の継承式しかしていないこいつに私を縛りきる力など無い。おまけに死んだ。
 ワタシは自由だ。この体は綺麗な上、中々使い勝手がいいので貰っておく。
 国も滅んだことだしお前にだって異存は無いだろう。
 せっかく生き返ったんだ。今度は民の事など考えず、お前の好きに生きていくがいい」

 魔獣はリオンの顔でニッと哂った。

「待て! ……その体を持っていかないでくれ!! お願いだ!!」

 去って行こうとするその体に俺は必死で取りすがる。
 中身が魔獣に摩り替わったとはいえ、体はリオンなのだ。

「ふふん。300年間もワタシを王家のためにタダ働きさせておいて、その上こんなちっぽけな体さえよこさない気か?
 人間というものは信じられないごうつくばりだ」

 魔獣ヴァティールは益々俺をあざけった。

「それは謝る。俺の先祖がしたこととはいえ、申し訳なかった。
 代わりに俺の体をやるからリオンを返してくれ。せめて人間として死なせてやりたいんだ!!」

「……ほぉう。中々殊勝な奴だ。ワタシに体を差し出せば当然お前の魂は無くなり、転生もできなくなる。それでも良いのだな?」

 魔獣は赤い瞳を眇めた。

「……もちろんだ。リオンの体を返してくれるなら俺の命などいらない。」

 俺は魔獣を真っ向から見つめ返した。

「ふん。人間にしては珍しい。それによく見るとお前は始祖王シヴァに似ているな。
 ワタシは糞ヤローのアースラは大っっっ嫌いだったが、シヴァは結構好きだったんだ。
 そこまで言うのならお前の望み通りにしてやろう。
 お前の体をよこすがいい」

更新日:2013-09-30 15:22:41

滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)