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小説

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6.異変

 ここに来て3ヶ月がたった。

 家事の腕も二人とも上がり、余裕の出来た今は畑も少々作っている。これからは庶民として暮らすのだから何か仕事を持っていたほうがいいだろう。

 弟の白すぎる肌は少し焼けて健康な少年らしい容貌に徐々に変化している。
 それもとても嬉しい。

 人見知りで怖がりな弟はここに来た当初は俺のうしろにかくれてばかりいたが、それでも人との触れ合いはけっこうあったし外に出ないと覚えられないような言葉もずいぶん覚えていった。

 ここでの生活は王宮の俺の部屋に隠れ住まわせていた頃とは違う。
 城の俺の部屋の中では病的に手放せなかったぬいぐるみも今ではそれほど執着をみせない。

 リオンは毎日大きな声を立てて笑うようになった。
 一年もすれば幸せに育ったごく普通の子供と変わらなくなるだろう。

 俺はこの暮らしに本当に満足していた。


 
 
 リオンと一生懸命耕した畑で村の名物農作物シューサーが小さな芽を出したころ、異変は起こった。

 夜中だというのに空がやけに赤い。
 寝床を起きだして外に出てみると町が、城が燃えている。
 もうもうと上がる煙が数十キロはなれたこんなところまでたなびく勢いで広がっている。
 俺たちがこの鄙びた場所にこもっている間に何か恐ろしい出来事が起こっていたのだ。

 急いでリオンを連れ、すぐ近くの村に行く。
 少しは情報が入っているかもしれない。

 しかしそこには他国の兵士が大勢居た。
 俺は見たことがある。
 外遊先で見た特徴的なその鎧。

 我が国とほぼ規模を同じくする巨大帝国アレスの兵だ。

 装備が略式であることから正規兵ではなさそうだが、私欲に走ったアレス帝国の民兵達により村でも奪略が始まっていた。

 独特の青い鎧を着けたアレス帝国の兵士が無抵抗に等しい村人たちを無残に切り殺していく。
 赤子を抱いた若い母親も、小さな妹を背にかばう幼い兄もまとめて兵士は突き殺して笑った。

 まるで獣のようだ。

 同じ人間とは思われない。

 戦を好むアレス帝国のうわさを聞いたことは何度もあった。
 我が国が建国したころには何度も戦った相手だ。

 しかしアレス帝国は何度我が国エルシオンと戦っても敗北し、以来約300年、他の国に手を出すことはあっても我が国には手を出さなかった。

 それどころか友好条約を結び、過去には何度か自国の王子や姫を人質同然にに差し出してまで友好的に振舞ってきたのだ。
 それが何故今頃ここまでして…。

 呆然としている間にも何人もの人たちが切られていく。
 全部合わせても500人と居ない小さな山里だ、このままでは全滅してしまう。
 

更新日:2013-02-13 16:00:01

滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)