• 作品を探す:

小説

携帯でもPCでも書ける!

  • 95 / 115 ページ

第6章

 




 コトリ、コトリ、コトリ、コトリ…………。

 なにか、とても小さな音が聞こえ始め、暗い闇が少しずつ白くなっていく。


――あたたかい……

 あたしの大好きなにおいがする。

――ユーリ、いるの……?

 あたしの力の入らない指を、誰かが握った。
 重たいまぶたをうすく開ける。

「サラ?」

――ユーリ……いた……よかった……。

 まぶたを開けていられなくなり、また意識が遠のいていく。

「サラ、愛してる。そばにいるから、ゆっくりおやすみ」
 彼の唇が、あたしのまぶたに触れた。

――愛してる、ユーリ……。








「ほんとうに大丈夫なのかよ、このまま目を覚まさないなんてことないよな」

「さっき一度だけ、目を少し開けたんだ、大丈夫だ。もう少し寝かせてやりたい」

「傷も塞がりきっていないし、きっとすごく疲れているんだわ」

 みんなの声が聞こえる。

――あたし、また寝ちゃったんだ。


 指が動かせるようになっている。

 あたしの指を握る手に力が入った。
「サラ? おきたの? ……ね、今、指が動いたわ」

 ゆっくりと目を開ける。
 とても眩しくて、慣れるまでしばらくかかった。

 だんだんみんなの顔が見えてくる――――心配と、安堵のまざった表情。

 みんなが覗き込んでいる。
 あたしがふふっと笑うと、みんながほっとため息をついた。

「よお、寝坊だぞ、サラ」

「おかえりサラ」

 みんなの温かい手が、かわるがわるあたしの頬をなでた。


 起き上がろうとしたが、頭さえ持ちあがらない。
 ママとユーリが抱き起こしてくれて、アッシュが背中の下にクッション代わりの藁(わら)を足してくれた。

 ユーリが藁の上で腕をまわしてあたしを支えてくれる。

「ただいま」と言おうとしたが、声がかすれて出てこない。
 代わりに笑顔をみんなにむける。


「『ただいま』ってサラが」

 びっくりしてユーリを見た。
 ユーリもあたしを見つめる。
 しばらくお互い見つめあって、ユーリが困ったように微笑んだ。

「ごめん、もう少し強く思ってくれないとわからないんだ」

――あたしの……声がきこえるの?

 ユーリが静かに笑う。
「竜の……命をもらったろ?」

――そうか、そうなんだ……すごい

「驚きだろ、僕の心も読めるらしい。あんまり嬉しくないけどね」
 カーライルが眉間にしわを寄せる。
「でも、代わりに僕はすごい力をもらったよ」

――カーライル、あたしのために竜の王の魂を受け継いだのね……あなたは、大丈夫? 何も失っていない?

「あなたのことを心配している。失うものはなかったか……エリンは、長い間、感情が欠落していたんだ……」

「大丈夫、『魂を継いだ』っていっても、彼の意識は全く感じない。僕のままだ。何も失ってなんかいないよ、もちろんリアナへの愛情もね」

――よかった……。早く帰らないと……リアナもお父様も、きっとすごく喜ぶわ。

「サラ、帰るのはきみが元気になってからだ」
 ユーリが額をくつける。
「時を越えるのは、体に負担がかかりすぎる。何が起こるかわからない」

「帰りたいのね、でもユーリの言う通りよ。あせらないで」
 ママがあたしの口に水の入った器をよせる。ユーリがそれを受け取り、あたしに飲ませてくれた。

更新日:2013-08-21 10:36:40