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第5章
目を開けると、あたりはまだ暗かった。はっとして起き上がる。
――夢……?
周りを見回す。
心臓が暴れ始める。
――どこから?
記憶を確かめたいのに、鼓動がうるさくて何も考えられない。
――とにかく、顔を洗って、落ち着こう。
ドレスルームへ行き、洗面台の蛇口を捻って乱暴に顔に水をかけ、口をゆすいだ。
布で顔を拭いて、大鏡に映る自分に気が付いた。
――夢じゃ……なかった。
彼に会うために昨日選んだドレスを、あたしはまだ着ていたのだ。安堵のあまり、その場にへなへなと座り込むと、震える指に涙がこぼれ落ちた。
――彼が、好き。
その想いだけで、涙が止まらなくなる。
なんでこんなに弱くなってしまったのだろう。
あたしは強くなりたいのに。
その時、コツンと窓ガラスが小さく音を立てた。
主室に駆け戻り、カーテンと扉を開ける。
「ユーリ!」
顔も見ずに彼の胸に跳び込んだ。
彼がギュッと抱きしめてくれる。
「やっぱり。そろそろ泣く頃だと思った」
いつからここにいたのか、彼の服が冷たい。
「大好き」
と彼の胸に顔を埋めた。
彼の指があたしの髪を梳く。
顔を上げると、すぐに彼の唇が優しく重なった。
彼は「安心した?」と笑って、
「きみが朝食を済ませたころ迎えに来るよ」
と、あたしから体を離した。
「えっ、もう?」
慌ててしがみつく。
「やだ!」
――――自分で言って苦笑した。これではまるで駄々っ子だ。でも、会えたばかりで、もう帰ってしまうなんて寂し過ぎる。
「きみも来る? 休みの日は僕が朝食当番なんだ」
あまりにも魅力的な誘いに思わずニンマリ笑う。
「行く! 五分待ってて」
ドレスルームに駆け込み、ドレスを脱ぎ捨てた。
クローゼットから丈の長いシャツとキュロットを取り出し、三十秒で着替えてブーツに足を突っ込む。
ブラシで絡まった髪をほどいてユーリがくれた髪飾りをつけ直し、ドレスルームを出ようとして足を止める。
「忘れるところだった」
もう一度クローゼットに戻り、ベルトを着けて、剣を差した。
気持ちがシャキッと引き締まる。
懐かしい重み。これでこそあたしだ。
――夢……?
周りを見回す。
心臓が暴れ始める。
――どこから?
記憶を確かめたいのに、鼓動がうるさくて何も考えられない。
――とにかく、顔を洗って、落ち着こう。
ドレスルームへ行き、洗面台の蛇口を捻って乱暴に顔に水をかけ、口をゆすいだ。
布で顔を拭いて、大鏡に映る自分に気が付いた。
――夢じゃ……なかった。
彼に会うために昨日選んだドレスを、あたしはまだ着ていたのだ。安堵のあまり、その場にへなへなと座り込むと、震える指に涙がこぼれ落ちた。
――彼が、好き。
その想いだけで、涙が止まらなくなる。
なんでこんなに弱くなってしまったのだろう。
あたしは強くなりたいのに。
その時、コツンと窓ガラスが小さく音を立てた。
主室に駆け戻り、カーテンと扉を開ける。
「ユーリ!」
顔も見ずに彼の胸に跳び込んだ。
彼がギュッと抱きしめてくれる。
「やっぱり。そろそろ泣く頃だと思った」
いつからここにいたのか、彼の服が冷たい。
「大好き」
と彼の胸に顔を埋めた。
彼の指があたしの髪を梳く。
顔を上げると、すぐに彼の唇が優しく重なった。
彼は「安心した?」と笑って、
「きみが朝食を済ませたころ迎えに来るよ」
と、あたしから体を離した。
「えっ、もう?」
慌ててしがみつく。
「やだ!」
――――自分で言って苦笑した。これではまるで駄々っ子だ。でも、会えたばかりで、もう帰ってしまうなんて寂し過ぎる。
「きみも来る? 休みの日は僕が朝食当番なんだ」
あまりにも魅力的な誘いに思わずニンマリ笑う。
「行く! 五分待ってて」
ドレスルームに駆け込み、ドレスを脱ぎ捨てた。
クローゼットから丈の長いシャツとキュロットを取り出し、三十秒で着替えてブーツに足を突っ込む。
ブラシで絡まった髪をほどいてユーリがくれた髪飾りをつけ直し、ドレスルームを出ようとして足を止める。
「忘れるところだった」
もう一度クローゼットに戻り、ベルトを着けて、剣を差した。
気持ちがシャキッと引き締まる。
懐かしい重み。これでこそあたしだ。
更新日:2013-08-20 23:27:38