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小説

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エピローグ



 中庭にダリアが咲き始めたころ、今まで延び延びになっていたあたしの成人の儀が執り行われた。
 
 ウィルも、ログノールの家族もみんなお祝いに来てくれて、あたしは丸暗記した全く意味の分からない難しい文章を、なんとか噛まずに読み切った。

 そのあとのダンス用のドレスを着ることを思えば、人前での挨拶なんて何の困難でもなかった。

 フィオナは最先端のデザイナーだ。それは認める。
 でもその最先端のデザインをあたしで試すのは二度とやめてほしい。
 なんと、袖がないのだ。こんなに露出の激しいドレスは初めて見た。
 布が胸までしかない。肩も、腕も、背中も丸出し。

 仮縫いの時には恥ずかしさと腹立たしさで倒れそうだった。
 でも母は大絶賛で、母が賛成すれば当然父は逆らわず、本人の意思をまるで無視してこのドレスに決まってしまったのだ。

 父やウィルと踊った後、いろんな国の王子と踊らされたが、肩と胸元が気になって、ウィル意外、誰の顔も覚えていない。
 早くユーリに助けてもらいたいのに、ユーリは誰も入れないはずの中二階のアーチに腰かけて、見下ろしているだけだった。

 あたしがそっちを向くたびに微笑んではくれるけれど、一向に助けに来てくれる気配はない。
 これは自分で抜け出すしかないと、踊りながら目立たない場所まで進み、具合の悪いふりをしてよろよろと力なく相手につかまったところで、やっとユーリが青い顔をして飛んできた。

 あまり大事にはしたくなかったので自分で外に出ようと思っていたのに、ユーリがあたしをダンスの相手から奪い取り、横抱えにして連れ出したため、少しざわつかれてしまった。
 母と目があって目配せすると手を振ってくれた。きっとうまく言ってくれるだろう。


 ユーリがあたしを中庭のベンチに座らせ、心配そうにのぞき込む。

 あたしが舌を出すと、
「ずるいな」と大きなため息をついた。

「ユーリ以外の人と踊ってもつまんないもん」

 口をとがらせると、彼は笑って
「踊っていただけますか」とお辞儀をし、手を差し出した。

 何曲も息が上がるほど楽しく踊って、二人で芝生に倒れ込む。

「あー、楽しかった」
 息を整えながら隣で寝転ぶユーリを見上げると、

「ホールに戻られますか?」
 と、彼がいたずらっぽく微笑んだ。

「でも、ネフェルティティが淋しがってるかも。一度部屋に戻ろうかな。一緒に来てくれる?」

「よろこんで、王女殿下」
 寝転がったまま、あたしの手にキスをする。
「ありがと、じゃ、行きましょ騎士様」
 
 そういって起き上がり、パタパタと草を払って窓枠に足をかけると、ユーリが呆れたように目を見開いた。

「きみ、今着てるのはドレスだってこと忘れてない?」

 あたしはそんなことお構いなしに窓によじ登り、一階の屋根に飛び移る。

「ユーリ」
 あたしが二階から手招きすると、彼はやれやれ、というように笑って後に続いた。

更新日:2013-08-21 11:13:43