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小説

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お大事に

「ユウさん、熱がありますね」
玄関を開けるなり、京介はそう言って慌しく靴を
脱いだ。
「あー・・・やっぱりそうかな。ちょっとボーッとすると
思っていたんだよね」
「熱は測りましたか?」
「あるな、という予感はしていたけど、まだ」
僕が不精隠しに首を竦めるのと、京介の手が額に触れられる
のと同時だった。
「少し汗ばんでもいらっしゃいますね。口を開けてみて
ください・・・ああ、喉も少し腫れていますね」
「そんな気がしてた。なにかお腹に入れて休もうかな」
「得策です。ご希望のものを購入してきますよ」
京介はコートも抜かずに、確かめるようにふわりと僕を
抱いたまま、頭の天辺に、額に、頬に、軽く唇を落とした。
「肉マンがいいな。コンビニの」
「コンビニでよろしいのですか?車で中華料理屋まで
行ってもすぐに戻って来られますよ」
仕事から帰ってきて疲れているだろうに、京介はそんな
労も惜しまずに微笑んでくれるものだからさ。
ついつい本音も出てしまうもので。
「熱があると、ちょっと心細いからね」
「それは私に側にいて欲しいという意味に取ってもよろしい
ですか」
「お、お腹も減ったしね」
「了解しました。愛しい人。さあ、リビングにお戻りください。
そしておとなしく私の帰りを待ってくださるように」
「約束します」
僕がおどけてあげた片方の手のひらに、京介は目を細めた
小さなウインクを投げて、また玄関を出て行った。

今夜はおとなしく、ね。

更新日:2009-01-10 22:03:59