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小説

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チャーミングな女の子

「ねえ・・・京介。ドーナツ買ってもいいかな」
駅前の路面に面した小さなドーナツ屋の前で僕は
足を止めた。
「ええ。もちろん結構ですが。ユウさん、突然どうされた
のです?」
あれ見て。と、僕は道路の反対側からドーナツ屋を
指差した。
「あのカウンターの女の子さ、笑っているんだ」
「確かにそうですね」
それが?と、首を傾げた京介に、僕はわざと口角を
上げて笑って見せた。
「笑い皺が出来るぐらい笑って接客しているってこと
だよ。こんな寒いのに。路面店で。それって凄いことだと
思わないかい?」
「ああ・・・確かに。とてもいい笑顔ですね。とても
チャーミングだ」
「だろ。しかも閉店まであと4時間もあるのにね。まだ
笑っていられるっていいな、って思ってさ」
「ドーナツを買ってあげたくなった?」
うん、と頷いた僕に、京介は黙って手を差し出して、僕の
手から野菜なんかが入っているエコバックを取り上げた。
「身軽な方が沢山購入できると思いますよ」
「僕ときみと二人なんだよ?」
「明日は、美容院に伺いますので多めにお願いします」

ドーナツを買って振り返ると、京介がカウンターの女の子
みたいに微笑んでいて、僕も釣られた。

ただ、それだけの話。

更新日:2009-01-10 22:02:42