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俺とオタクと二次元道

「来たあぁぁぁぁ―――! ショタラブセレクションの愛輝くんのフィギュア! これ予約無しだと中々見つからないよ!」
「予約してなかったの?」
「うん、色んなフィギュア見ていたら忘れていたの………あたしとしたことが本当に迂闊だったわ」
「そうなんだ。でも私は小さい男の子のフィギュアは興味が無いな。私はこっちの幼女コーナーに置かれているフィギュアに興味あり」 
現在俺達が立っている秋葉原店にはフィギュアだけでなくアニメ限定カードやゲーム、ライトノベル、漫画、グッズと様々なものが置かれている。しかし、最新のものは置かれていない。最新の物や特典がつくものは大体アニメイト、とらのあな、と言った有名店である。
 その秋葉原店のフィギュアコーナーでぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ仔那珂。そしてその近くの幼女コーナーで仕切られているフィギュアを眺める御月。
 それは無邪気で可愛い笑顔だった。
「愛輝くんのフィギュア高いけど………あたしのモチベーション上げる為には仕方ない出費かな?」
「ああ、この幼女戦士フィギュア完成度低い………絵師さんの足引っ張りすぎ!」
 無邪気且つ純真無垢でフィギュアを眺める二人。
 別にそれは良い。趣味なのだから。
 ただ、
 一つ聞いていいか?
「何で俺もここにいるの?」
 ぽかーんと立っている俺。その問いに二人はフィギュアを眺めたまま答える。
「和磨に荷物持ちをさせる為」
「和磨君にオタクの素晴らしさを知って貰う為」
「はあ?」
 訳が分らない。
 俺がオタクに理解を示すはずないだろう。前のプールの帰りに思い知らされたよ。その後の悪友二人との状況は、メールで何度も説明したけどまだあの二人はロリコンと俺を罵って怒っている。夏休み中にはどうにかして誤解を解きたいものだ。
仔那珂に『買い物に一緒に行こう』との電話の着信音で起こされたと思ったら、まさかこんなことに巻き込まれるなんて。服屋で服の買い物を持たされるならまだいい。だけどこの場所で待たされるのは酷だ。仔那珂のメールに『勿論、勿論、勿論』とテンションマックスで送り返した純情がバカみたいだ。
店内の時計は十二時二十五分を差している。そして今日の日付は八月十三日。
「ああ、これも買おうかな……」
「可愛いな、幼女戦士のリフリーちゃん。買おうかな~? でもミルクちゃんのバージョン変化後も欲しい………」
 二人は時間を気にせず、次々と標的を変える。
「………………あの、そろそろ昼食にしませんか?」
 現在我が腕は二つの買い物袋でいっぱいになっている。その買い物袋は黒くて中身が見えないようにしているのだろうが、アニメグッズが飛び出しているのでカモフラージュを成さない。
「う~ん、もう腹減ったの、和磨?」
「うん、うん、うん、腹が減って死にそうだ」
 正直腹など減っていない。でもバッグ持ちで疲れた腕を休ませるには良い休憩時間だ。
「うん、あたしは賛成。御月はどう?」
「私も構いません」
 二人がそう言ったので俺は安心して腕の力が抜ける。
 そして、
持っていた袋が店の絨毯に強く打ちつけられる。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――! ムキショタ3・5の番外編ゲームが入っているのに!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――! 幼女戦士のミルクちゃんのミルク装備のフィギュアが入っているのにぃ!」
 二人は俺に怒りを向ける前に、打ちつけられた買い物袋に駆け寄る。幸い二人の心配する物は傷一つついていなかった。
「ああ、良かった。傷一つついてない」
 しかし、打ちつけたのは事実。変わることのない過ちである。
「和磨…………」「和磨君…………」
 二人は怒りの視線を俺に向ける。そりゃあ当然である。

更新日:2011-09-21 05:11:07

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