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「記-さけび-憶」 6

母さんは何の反応もなかった・・



俺は知りたくもない過去の情報を知った・・母さんはどんなに辛かったのだろう・・・どんなに寂しかったのだろう・・

そう思って仕方がなかった・・・



「マスコミが面白おかしく取り上げた記事なのかもしれない・・電波ジャックなんて有りえない出来事だ・・・何か深い事情があったんだ・・・」



俺はそう思い返した・・・



「あの新聞記事を確かめるためにも、このHEAVENSとか言うと所に行ってみるしかない・・・」



『母さん、俺・・行ってくるよ・・・あの哀川京介とか言う奴を必ずここに連れてきて謝らせるよ・・・』



そう言い、ボストンバックを手に取った



『俺はこんなに必要ない・・・』



京介は札束を数個だけ手に取りメモ書きを残した・・



「お婆ちゃんへ




俺は東京に行きます、このお金は母さんの治療費に使ってください」



色々と気持ちを書くのは嫌だった・・・ただでさえ疎ましく思われている存在だ・・・

母さんの治療費の件もあり、俺には冷たく当ったのかもしれない・・・

俺が最後に母さんに出来る事はこんな事しかないのだ・・・自分で稼いだ金でもないが少しは役に立つだろう・・・



母を背に扉の前に立った



『母さん、行ってくるよ・・・』



京介は振り向くことなく扉を開けた















[(株) MIOビル地下室]



「ハッ・・・」



紗江は眠りから目を覚ました・・・

辺りを見回した・・いつもと変わりない空間だった・・・



「・・・男の子・・・」




紗江にはその感覚がなんなのか分からなかった・・・

今までに沢山の人間の思考の中を彷徨い、本来の自分の記憶と言うものが無い故、首を傾げながらベットを降りた・・



「・・・」



紗江は服を着替え部屋の扉を開けた・・



薄暗い廊下を歩き階段を上り一階ロビーへと出た



「・・・」



ロビーで立ち止まった



大きな正面玄関はベニヤのようなもので塞がれていた



「・・・」



紗江は動かないエスカレーターを上り始めた・・・



二階まで上がると振り返りロビーを眺めた・・



「て・・ん・・て・・ん・・・」



ロビー壁に大きく張り出されているパネルの文字を読んだ・・・




『うぐっ・・・うぅぅ・・・』




紗江の頭に激痛が走った・・・その場で蹲り頭を抱えた・・



フラッシュのように女性の映像が頭を流れた・・・



沢山の人前でカメラに向かう女性・・・

カメラの前で歌う女性

男の人と楽しく話をする女性・・・

激しい体の関係を繰り返す女性・・・









『知ってる・・・てん・・てん・・・小川 愛・・美・・・』









紗江は立ち上り、暫くの間、てんてんのパネルを眺めた・・・



「・・・」



何かを感じ取っていた・・・

大きな不安と何かしらが迫りくる事を・・・



紗江はその後、階段を上り屋上へと向かった・・・



「ギギギ・・・」



錆びついた扉を開けるとまだ明るい外の景色が目に飛び込んできた・・・



目覚めてから一度も外の景色を見た事のない紗江には壮大なものだった・・



周りを満たすとゴミが散乱していた・・紗江には理解できないが、数年間もの間放置されていた事を物語っていた



紗江は屋上出口のコンクリートの上を見上げた・・コンクリートは劣化しボロボロになっている部分も多かったそして脇には錆びついた梯子式の階段があった



「・・・」



紗江はその階段を上り屋上の高さより、少し高い場所へ立った・・・






更新日:2011-10-12 23:33:57

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