• 8 / 15 ページ

2006年・私の「物語の作り方」

 これまでに、「物語は完璧」と過剰な発言をしたのは、「この私が考えたから最高のデキなのよ!」と言う訳では断じてなく。
 私は、ただ「物語」に引っぱられるままに動いているだけ。

 私の物語の書き方は、テーマが先にあるわけでもなく、キャラがあるわけでもなく、「物語」が浮かぶ。
 物語が浮かんだ瞬間(厳密に一秒ではなく、長いと一分以上)に、最初から最後まで決まる。
 自分では思いもよらない物語なので、「浮かぶ」というより「物語が降りてくる」感じ。
 特に長い物語の場合は、「物語の神様降臨!」といった感じ。

 物語が降臨する瞬間は、頭の中で、映画を高速早送りしてるか、絵本を素早くめくっていく感じ。
 絵本といっても文字はなく、断片的にシーンだけが続く。
 重要なセリフは、そのシーンごとに声で浮かぶ。
 これを、とりあえず「映画絵本」と呼ぶことにする。

 「もし……だったら~」という妄想は何気ないことでも展開するので、映画絵本は日常を送りながら、短いものから長いものまで見る。
 そんな中でも「これは良かった」と自分が感動したもの、「あらためて読みたい」と思ったものを、文章にしている。
 だから「一度見たもの」になる。

 「映画絵本」は映画のように具体的ではなく、イメージで出来ているので、登場人物の具体的な容姿や名前などは一切わからない。

 例えば、

 1.幼い男の子と女の子が無理やり引き離されるシーン、
 2.制服の少女が、道ですれ違った男の子に目を奪われるシーン、
 3.少女と男の子が両思いになるシーン、

 を見たとする。

 シーンと一緒に、そこにいる全員の感情も入ってくる。

 1.
 引き離されて悲しい。
 男の子は「絶対また会う!」と決心している。
 女の子は何か言いたいけど泣いてしまって言葉にできなくて余計に悲しい。
 周りの大人たちは「仕方ない」と思っている。

 2.
 少女が男の子を見て、胸が痛くなる。
 男の子は少女に気づいていない。
 少女は今まで「恋なんて」と思っていたのに、なぜ道端ですれ違った男の子がこんなに気になるのか不思議でたまらない。

 3.
 少女と男の子と一緒にいて、穏やかな満ち足りた幸せ。
 男の子は、会いたかった人に会えて嬉しい。
 少女は、幼い記憶がなく、初恋の人が幼馴染だと知って驚いているけど嬉しい。

 以上の受け取ったシーンと感情を、私は、「引越しで別れた幼馴染と再会して恋に落ちる」という物語だと解釈する。
 でも、こんな風に一文で書いてしまっては、その時に受け取った感情が伝わらない。
 私が感じたのは、もっと切ない気持ち。
 それで、見えなかったシーンを補足して、「もっと切ない気持ち」にいたる道のりを作ろうとする。
 同じ話をどれだけドラマチックに組み直すか、という感じ。

 私がしていることは、
①断片的なシーンを破綻しないようにつなげる
②物語をわかりやすくするためのキャラをたてる
③日本語の文章で書く

 つまり「見たことをわかりやすく再構築して文章で表現する」こと。

更新日:2011-07-30 18:51:50

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook