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昇進試験

翌朝、ユルヴァに叩き起こされた。

「起きろ。
朝だぞ」
「‥‥‥おう、起きる」

ベッドは毛皮の上にシーツを被せた物で実にふかふかで温かいのだ。
しかし、糞みたいに臭い。
仄かに香る獣臭。
それが、シーツに包まって有り、糞臭い。
まぁ、良いや。

ベッドから這い出てると、ユルヴァが何やら変な仰々しい服を持っていた。
具体的に言うと、中性貴族の服である。
こんなの着れるか!?
エリマキトカゲか、アホ!!

「何だこれ?」
「知らねーよ。
あの騎士のオッサンが朝来て、お前にこれ着る様にって言ってたぞ」
「要らんわ、ボケ。
俺の服は?」
「洗った」
「‥‥‥」

取り敢えず、どうしようか?

「おい、ユルヴァ。
俺位の背格好の男からズボンとか上着とか借りて来てくれないか?」
「はぁ?
これ着ろよ」
「誰が着るか、こんなエリマキトカゲ!
後で、買い取るから今直ぐ持って来い」
「はいはい」

ユルヴァが溜息を一つして出て行った。
脇に置いてある九九式を手に取る。

「お前、実弾撃てるように成っちまったんだぜ?
如何するんだよ?」
≪シラン≫

「!?」

何処から声が聞こえたぞ!!

「気のせいか?」

耳を澄ますが、何も聞こえない。

「おーい、持って来てやったぞ」

其処に服を大量に抱えたユルヴァが入ってくる。

「オォ、悪いな」
「良いって事よ。
アイツ等が持ってても宝の持ち腐れだ。
私が見立ててやろうか?」

ユルヴァが悪戯っぽく笑う。

「おう、頼む」
「へっへ~ん。
任せ成って」
「おにーちゃーん」

そこに、マコもやってくる。
朝から忙しいな、オイ。

「あ、もう起きてた」
「おう。
今何時だ?」
「分かんないけど、携帯は朝の5時って‥‥‥」

慌てて外を見ると、日が昇ったばかりなのか、まだまだ低い所で燦々と弱弱しい光を浴びせている。

「中世ってマジで、太陽が昇り始めたら起きて、沈み始めたら眠るのな」

ビックリ過ぎて笑えない。

「じゃあ、私朝ごはん作るの手伝って来るね」
「おう、任せた」
「ほら、これで如何だ?」

ユルヴァが見立てたのは黄色と言うかベージュのシャツとズボンに二重コート、正式にはインバネスコートって言うのか?
あれを付けた奴を俺に差出してきた。

「おお、スゲー
何か、中世っぽい」
「意味わかんねーよ。
でも、動きやすいし、寒くない。
多少切られても革製の鎧が下に有るから、大丈夫だ」
「おぉ、すまん」

さっそく、それに袖を通し、脇に置いた九九式を手に持つ。

「あのさ、有ったらで良いんだけどさ、これを背負えるぐらいの革バンドあったらさ欲しいんだけど、何とかならない?」
「革の帯?
細さは?」
「5cmくらい?」
「5せんちー?
どのぐらいだよ‥‥」

仕方ないので指でCを作って見せる。

「OK、じゃあ有ったら教えるよ」
「サンキュ。
じゃ、下行こうぜ」
「おう」

更新日:2011-07-26 23:59:05

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