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水槽の中の金魚

「なんだなんだ?!?女っ気もなしに昼間からゴロゴロ中か!?」


と電話越しに言うのは友人の稲川健太

彼は中学生からの同級生で、パチンコ、タバコ、酒を
教えてくれた、言わば悪友である。



「いいじゃんかよ!!ほっとけ!!」

僕は近藤裕二。通称ユージ。都内の大学に通っている。


今年で3年目になる。1年から真面目に授業に出ていたため、
単位もほとんど修得しており、真面目だった反動が来たのかわからないが、ほとんど学校にも行かず、バイトも続かず、自堕落な日々を送っている。
たまにこういった自堕落な自分をあざ笑うかのように健太は電話をかけてくる。

まるで、どこにもいけない水槽の中の金魚をあざ笑いながら見るように。

健太は続ける

「そ、れ、が、さ、いい情報があるんだよ」

「な。。。なんだよ」

「合コン出ないか?超カワイイ娘いるってよ!!」

「なに!!いくいく!!」

まさに「あざ笑い」ながら言われているのは重々承知だ。

内向的な僕とは対照的に健太は外交的であり、自堕落な僕とはうって変わって車持ちで、友達も多い
イケメンとはいえないが、
話もまあまあ上手いので「それなりに」モテる。

言い忘れたが僕は彼女がいない。もっともこんな自堕落な男についてくる女がいたとしたら、それこそ物好きな女だと思う。
健太は続ける

「でもオマエ地味すぎるからな。もうちょっとオシャレできないの?」


「いいじゃねえかよ!男は中身だ!!」


「いいたいことはわかるけどよ…オマエMORGANってわかる?」

「は?何それ?」

「はぁ…やっぱだめ!!またな!!」


ガチャ!!ツーッツーッ…

全く最悪である。
この自堕落な生き方を変えてくれるお嬢と出会えるかと思ったのに
お嬢様のいるお城の門番に門前払いされてしまった。


「くっそ!!」


そうこぼし、吸っていたタバコを灰皿に叩き、火を消した。

「なんかいいことないかな」

大学に入った頃からか、いつの間にかこれが口癖になったいた。



朝からつけっぱなしのテレビには連続殺人犯が行方不明だというニュースが映っている。


僕は家にいるのが嫌になり、テレビを消して気分晴らしに外に出た。



僕の住処は荻窪駅南口からでてすずらん通りに入り、
桃井第二小学校を過ぎて少し入り組んだ所にある2階建てのハイツ小林
この2階にある一室に住んでいる。


ドアを閉めて階段を降りると人通りのいない通りにでた。

更新日:2011-05-20 14:21:21

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