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3日目 下
「イー、エフ、無事か?」
「ああ、なんとかな」
イーとエフがそれぞれ床から身を起こす。シーやディーの様子は相変わらずだが、イーとエフのふたりはとりあえず無事なようだ。
頑強な筋肉シールドは、落下による衝撃すらも半減させる。つくづくドワーフでよかったと思う瞬間だ。
上を見上げれば、闇に覆われた四角い穴が遥か上にぼんやりと浮かんでいる。
とてもじゃないが、手の届きそうもない高さだ。
肩車などをしても無駄だろう。せめてフック付きロープでも持っていればよかったのだが、そのような便利アイテムは、残念ながら持ち合わせがない。
「なあ、ここはどこだ?」
きょろきょろと不安げに辺りを見回すイーに、エイはなるべく心の乱れを感じさせぬよう、冷静さを保って答えた。取り乱すのは得策ではない。
「地下2階だ。1階から落ちちまったようだ」
「2階……」
「くそ。こんなときに……」
2人とも、地下2階に落ちた意味を理解している。床へ叩きつけられる拳が、ごつりと鈍い苛立ちの声を上げていた。
ぼんやりと発光する、全体的に白々とした空間、ベッドがちょうど4つほど並べられそうな小部屋には、左右に奥へ繋がる通路が伸びている。
まったく未知のエリア。どちらの通路を選んでも同じだろう。エイはビーを担ぎ上げると、一瞬悩んだ上で右の通路を選んだ。
「なあ、どうしてこっちなんだ?」
エフの問いかけが、エイの胸をかり、と削った。
理由などない。選ぶ情報などどこにも転がっていなかったのだ。
こちらを選んだのはただの気まぐれ、思いつきだった。誉められるいわれもなければ、責められるいわれもない。
しかし、エイの胸奥に出来たちいさなささくれは、その傷を広げて、中にあるぽっかりと赤い肉を覗かせていくのだった。
何の策もないエイを、静かに問われている気がした。
「なんとなくだ。理由なんてねぇよ」
「なんとなくだ? なんだよ。もっとマシな理由があんのかと思ったのによ」
エフのぼやきこそ、ほんのきまぐれでしかなかった。
しかし、突如訪れた嵐に揺さぶられる小舟となった今のエイには、いらいらを爆発させる地雷源となってしまった。
「知らねぇエリアに来て、どっちが良いも悪いもあるか。行くだけ行って、ダメなら戻りゃいいだろう」
「ああ、なんとかな」
イーとエフがそれぞれ床から身を起こす。シーやディーの様子は相変わらずだが、イーとエフのふたりはとりあえず無事なようだ。
頑強な筋肉シールドは、落下による衝撃すらも半減させる。つくづくドワーフでよかったと思う瞬間だ。
上を見上げれば、闇に覆われた四角い穴が遥か上にぼんやりと浮かんでいる。
とてもじゃないが、手の届きそうもない高さだ。
肩車などをしても無駄だろう。せめてフック付きロープでも持っていればよかったのだが、そのような便利アイテムは、残念ながら持ち合わせがない。
「なあ、ここはどこだ?」
きょろきょろと不安げに辺りを見回すイーに、エイはなるべく心の乱れを感じさせぬよう、冷静さを保って答えた。取り乱すのは得策ではない。
「地下2階だ。1階から落ちちまったようだ」
「2階……」
「くそ。こんなときに……」
2人とも、地下2階に落ちた意味を理解している。床へ叩きつけられる拳が、ごつりと鈍い苛立ちの声を上げていた。
ぼんやりと発光する、全体的に白々とした空間、ベッドがちょうど4つほど並べられそうな小部屋には、左右に奥へ繋がる通路が伸びている。
まったく未知のエリア。どちらの通路を選んでも同じだろう。エイはビーを担ぎ上げると、一瞬悩んだ上で右の通路を選んだ。
「なあ、どうしてこっちなんだ?」
エフの問いかけが、エイの胸をかり、と削った。
理由などない。選ぶ情報などどこにも転がっていなかったのだ。
こちらを選んだのはただの気まぐれ、思いつきだった。誉められるいわれもなければ、責められるいわれもない。
しかし、エイの胸奥に出来たちいさなささくれは、その傷を広げて、中にあるぽっかりと赤い肉を覗かせていくのだった。
何の策もないエイを、静かに問われている気がした。
「なんとなくだ。理由なんてねぇよ」
「なんとなくだ? なんだよ。もっとマシな理由があんのかと思ったのによ」
エフのぼやきこそ、ほんのきまぐれでしかなかった。
しかし、突如訪れた嵐に揺さぶられる小舟となった今のエイには、いらいらを爆発させる地雷源となってしまった。
「知らねぇエリアに来て、どっちが良いも悪いもあるか。行くだけ行って、ダメなら戻りゃいいだろう」
更新日:2012-02-02 22:47:09